金属やプラスチックの板を金型と呼ばれる専用の板で圧迫し、金型に沿った形に成形するのがプレス加工です。
プレス加工には「切る」「曲げる」「絞る」など様々な種類がありますが、場合によってはその様々な加工方法を検討しても違う加工方法を採用したほうがいい場合もあります。
この記事では、広い意味でプレス加工の範疇に入る加工方法「絞り加工」。プレス加工と似ているけれども似ていない「絞り加工」についてご紹介いたします。
プレス加工と絞り加工の違いやメリット・デメリットについて、分かりやすく解説していきます。
絞り加工とは
「絞り加工」は板状の素材を円筒や円錐など底のある容器に加工する技術ですが、身近なものだと「お椀」や「フライパン」は絞り加工を用いて作られています。
絞り加工は、絞りの深さや形状で複数の種類に分類され、大きく絞りの深さでの分類として、フライパンに使われる「浅絞り」と寸胴鍋で用いられる「深絞り」の2種類があります。
また形状での分類は以下の6種類に分けられます。
・円筒絞り加工
・角筒絞り加工
・異形絞り加工
・円錐絞り加工
・角錐絞り加工
・球頭絞り加工
絞り加工の特徴
絞り加工の最も大きな特徴は、完成品に継ぎ目が残らないことです。鍋やフライパンのように継ぎ目も無く綺麗に成形できます。
絞り加工はプレス加工の中では、最も難易度が高く慎重な製造が求められる加工方法ですが、形状や設備、成形条件が適正で無ければシワやワレなどの不良品が多く発生する恐れもある加工方法です。※シワやワレについては、詳しく後述します。
絞り加工のメリットとデメリット
絞り加工のメリット
絞り加工のメリットは、さまざまな形状に成形できることです。使用する金型により浅いフライパンや深さのある寸胴鍋など幅広い製品が生産できます。
一度金型を作ってしまえば金型が壊れるまで永遠に作り続けられるためコストが安く抑えられるメリットもあります。
絞り加工のデメリット
絞り加工のデメリットは、加工する難易度が高く不良品が発生しやすいことです。
絞り加工において加圧の強さの調整は、失敗すると「しわ」や「ワレ」などの不良品の発生につながります。
不良品が多く発生しすぎると、金型の制作費用が回収できない事態も起きかねません。
作業のほとんどを機械に任せられるのが一般的なプレス加工のいいところですが、この「絞り加工」については加圧の調整は慎重に行う必要があります。
「絞り加工」「張り出し加工」「へら絞り」
絞り加工に似た成形品を作ることができるのが「張り出し加工」と「へら絞り」ですが、ここからは「張り出し加工」と「へら絞り」について絞り加工との違いを踏まえてご紹介します。
張り出し加工
「張り出し加工」と「絞り加工」の大きな違いは、被加工材の厚みに変化が生じるかという点です。※被加工材とは加工される材料（素材である主に金属板）のことです。
絞り加工はプレスして被加工材に凹凸を作ることにより製品となりますが被加工材の厚みは変わりません。
一方の張り出し加工は被加工材にパンチを押し込むため、被加工材が延ばされ厚みがなくなります。
また、絞り加工は深絞りなどで深い加工ができる反面、張り出し加工は浅い形にしか成形できません。
へら絞り
へら絞りは板材を回転させながら工具を押しあてる加工方法ですが、その一方で絞り加工は金型を一気に押し込む加工方法です。
へら絞りは、絞り加工に比べて生産スピードがやや遅いものの小さな圧力で成形できます。
絞り加工でよく起こる不良とその原因
絞り加工は前述の通り、プレス加工の中でも難易度の高い加工方法ですが、金属の圧縮量が多く、加圧の調整を慎重に行う必要があり失敗すると「しわ」や「ワレ」などの不良品が発生します。
しわ
「しわ」とは被加工材が金型に引き込まれる際に生じるもので、しわを防ぐためには「しわ押さえ」という工具でしっかりと押さえながら、均一に圧力をかける必要があります。
また、パンチとダイに隙間が生じることで「しわ」が発生することもあります。均一に加圧しているにもかかわらず、しわが発生する場合は、パンチとダイに隙間がないかを確認してみましょう。
ワレ
「ワレ」とは、被加工材が圧力に耐えられず割れてしまうことで、しわ押さえの力が強すぎることで発生します。
ただし、ワレを防ぐためにしわ押さえを弱くしすぎても、しわの原因になります。
そのため、しわ押さえは適度な力で使用しなければなりません。
くびれ（ネッキング）
しわ、ワレと共に不良の一つに「くびれ（ネッキング）」があります。
くびれとは、被加工材が圧力に耐えられず反ってしまう不良で、くびれも加圧が強すぎることで発生します。くびれはワレや不良品の原因になりかねないため注意が必要です。
ぜひお気軽にご相談、お問い合わせください
川田製作所では、3,000種以上の加工経験を活かし、試作から量産まで幅広い対応を得意としたプレス加工メーカーです。
お客様が欲しい部品の形状・数量・ご予算・納期などをお聞かせいただき、お客様にとってよりよい加工方法を用いて製品をご提供できればと考えております。
小さなことでも、ぜひお気軽にご相談、お問い合わせください。お待ちしております。
